第5回WORLD BASEBALL CLASSICで、侍ジャパンがアメリカに勝利して優勝を果たしました。
負けたら即敗退となる準々決勝からの観戦で、彼らのプレーから多くのことを学び、気付かされました。
誇りを捨てて
先ず16日のイタリアとの準々決勝戦。
3回1死の場面で2番打者近藤健介が四球で出塁し、続いて大谷翔平が打席に立った時のこと。その実力から強打が期待されましたが、大谷は内野手が右寄りの「大谷シフト」を逆手にとって、三塁側にバント。慌てた投手は処理したもののバランスを崩したため一塁への送球が乱れ、俊足の大谷はセーフに。そして4番の吉田正尚が好打を放つと、近藤がホームを踏み、貴重な先制点を獲得したのでした。
その後の試合の流れを日本に引き寄せたこの大谷のバントは監督の指示を受けたものではなく、自身で判断。そして試合後、大谷は記者インタビューでこう答えたのでした。
「チームの勝利より優先する自分のプライドはなかった」
ダブルプレーとなって3死チェンジとなる可能性もあるため、プライドを捨てて1点先取に賭けた大谷の意表を突くバントは忘れることはできません。
信じる力
21日のメキシコとの準決勝戦。
先発の佐々木朗希が打たれ、メキシコに3点先取される中、日本も7回にようやく3点を獲得してイーブンに。しかし、その直後の8回表に2点の追撃を受けてしまい、侍ジャパンはその裏に1点を返したものの、攻撃は9回裏を残すのみとなりました。
そんなピンチの中でも物ともしないのが大谷。初球を右中間に飛ばす2塁打を放つと、次の吉田は慎重に四球を選んで1塁というノーアウトでの絶好のチャンス。そんな中、出番が回ってきたのは大会を通じていいところなしの村上宗隆でしたが…。村上はセンター越えのヒットを打つと、大谷に続いて1塁から俊足の代走周東佑京が逆転のホームに滑り込んで、劇的な勝利をつかんだのでした。
「最後は村上選手で勝つ。信じている」(栗山英樹監督)
「やるしかないな、と」(村上)
不振続きであっても選手の力を信じた監督と、その監督の期待に応えようと自分の力を信じた選手の「信じる力」に感動しました。
全員野球
そして22日のアメリカとの決勝戦。
先発の今永昇太が2回にソロ本塁打を浴びて失点しても、その裏には前日逆転サヨナラ打を放った村上が同点のソロ本塁打に加えて岡本和馬、源田壮亮が出塁して勝ち越し。さらに4回に点を追加して2点のリードに。
投げては戸郷翔征、高橋宏斗、伊藤大海、大勢の活躍と内外野の守りに助けられて終盤まで無失点に抑え込んだ。8回ダルビッシュ有がソロ本塁打を打たれ1点差に迫られましたが、最後の大舞台を任された大谷は素晴らしい投球で締めくくりました。
選手一丸となってのすばらしい攻守ぶりです。
「全ての選手が一生懸命やってくれたっていうのは一番だと思います」
栗山監督の言葉が響きます。
自分が現役時代には、他人に押し付けるのではなくみんなが一丸となって事案に取り組んでいこうと「全員野球」という言葉を使うことがありましたが、WBC優勝は文字通り「全員野球」の賜物です。
チーム一丸となって最後まで全力で物事に立ち向かっていくことの重要さ、尊さと同時に、優秀な選手に恵まれた指揮官をとてもうらやましくも思いました。