ppiに留意
Photoshopは、写真画像の明暗や色合いを調整して見栄えをよくする色調補正機能を備えているソフトウェアです。
直前まで講義を受けていたIllustratorがベクトル系ソフトと呼ばれ、図形やフラフの描画、文字装飾といった制作に適しているのに対し、Photoshopはラスター系ソフトで、コピー機やデジタルカメラで撮った画像データを小さなピクセル(画素)としてとらえ、編集・加工ができます。
1インチにピクセルがどれぐらい入るかを解像度として単位ppi(pixel per inch)で表し、1インチに72個のピクセルが入っていれば解像度は72opi、300個のピクセルが入っていれば解像度は300ppiとなります。
数値が大きいほど画像の質は向上することになりますが、数値が小さいと画質に影響を与えますので、制作時は留意する必要があります。
Web向けには、モニター表示に使うレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の光の三原色を基調としたRGBで制作。R、G、Bとも256階調で表現できるので、256×256×256=16,777,216通りの色が使えるといいますから、もうほとんどどんな色付けも可能といっていいかもしれません。
紙印刷向けには、モードをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色からなるCMYKに切り替えて対応します。4色とも数値0~100で表現され、その組み合わせで色を創ることができます。
PhotoshopとIllustratorは同じAdobe社製ですので、制作画面上の左右のツールバー、パネル等の作りや使い方が似ています。
非破壊編集
講師の話では、最近は「非破壊編集」がトレンドといいます。
色調などを補正する際には、元画像そのもののを変更する方法と調整レイヤーを使う方法があって、元画像を変更してしまうと元に戻すことはできません。
そこで、色調補正を行うための「調整レイヤー」といったいわばコピーを作った上で、パネルを操作して変更情報を付与することで補正するという方法が近年主流になっているとか。
調整レイヤーを使えば、いったん補正した後で設定を再調整・微調整したり、実施した補正を無効にしたり、補正の範囲等も変更したりすることが可能で、元画像は保持されたまま。こうした手法を「非破壊編集」と言うのだそうです。
Photoshopは画像のコントラスト(明暗の差)の調整やモノクロへの転換はもちろん、実にさまざまな補正ができます。
色相を変更すれば、赤みを帯びた画像が青や緑の色合いに。
色の鮮やかさの度合いである「彩度」を低くすればグレー調になりますが、メニューから「自然な彩度」を選べば、花木など画をより自然な彩度に。
レンズフィルター機能を使えば、カメラレンズにカラーフィルターを付けて撮影したかのように…。
驚いたのは「シャドウ・ハイライト」と「HDRトーン」機能。
シャドウ・ハイライトは、暗い部分を明るく、明るい部分を暗くする補正です。
レイヤーのコピーを制作して、元レイヤーを残しておいた上で行います。
教材の提供写真の暗部に補正を加えると、それまでは見えていなかった像が浮かび上がってきます。
HDRトーンも、撮影時の露出設定によって黒くつぶれてしまっていた部分を表示させることができます。
私のような強度の近視の者としては、おそらく撮影時に気付くことができなかった物体に初めて気付くほどといっても過言ではない補正力!
この機能もシャドウ・ハイライト同様、元データをコピーした上で実施します。
修正?創作?
色調補正以上に驚いたのは画像の修正です。
Photoshopには、画像上のキズ等の不要物を消したり、コピーして画像上で移動させたりすることができます。
スポット修復ブラシツールを使えば、画像上の小さなキズであれば、その上にカーソルを当ててワンクリックするだけで、周辺の画像と自然につながってキズを消してしまいます。
パッチツールなるものを使えば、ビンのラベルをはがしたような補正も。
コピースタンプツールは、altキーを押しならコピーしたい対象画像をマウスを使ってクリック。その後、その後コピー先の範囲をドラッグするだけで選んだ対象がその箇所にコピーされます。
コンテンツに応じた移動ツールは、対象画像周辺を選択した後、そのまま移動させたい箇所までマウスでドラッグ。ボタンを放すと、対象画像はそれまであった箇所から、マウスでドロップアウトした箇所まで移動。同時に移動元と移動先とも周辺の画像と違和感なくなじませることができます。
コピースタンプや移動ツールの使用効果については、画像の「修正」というより「創作」に近いのではというのが率直な印象です。
このほかにもさまざまな編集・加工方法があるようですが、編集・加工の技術力が高まれば非破壊編集や著作権との矛盾やあつれきが生じてしまうことが想定されます。
PhotoshopはAIを用いてさらなる機能アップを模索中といわれていますから、著作物、著作権者との調整や編集・加工のルール作りがより厳しくなることが予想されます。
折しも、米国では生成系AIによって知財権が侵害される恐れがあるとして、脚本家たちがストライキを行っているというニュースが流れていて、そんなことが講義中に頭をよぎったのでした。