ツルムラサキに丸オクラ
十数年来のお付き合いになるFさんのもとを妻と共に訪問。
Fさんは一反を超える畑でさまざまな野菜を栽培、その腕前はセミプロ級です。
「春先に丸オクラの種をまいたのですが、発芽しなかったため、2週間ほど前に種をまき直したのですが、それでもまだ発芽しなくて…」と打ち明けると、「発芽するまで時間がかかることがあるから。うちの丸オクラが目を出したから持っていけばいいよ」と言ってくれました。
〝苗半作〟と言いますから、Fさんの苗はとても魅力的です。
優しい言葉に甘えて「ありがとうございます。では2苗ほどいただければ」とお願いしました。
作業小屋でFさんが引っ張り出してくれたポットを10個ほど持って畑へ。
この日は朝から文字通りの五月晴れで、普段と違う畑の空気はとっても新鮮です。
Fさんの後をスタスタとついていくと、かわいらしい小さな双葉を発見。
30、40ほどあるでしょうか?
すると、Fさん「ツルムラサキはどう?」と。
見ると、双葉の列の先にはオクラではなくツルムラサキの種袋が。
ツルムラサキは、葉物野菜で夏場に葉や茎をおひたしなどにしておいしくいただきます。
収穫時の見た目はホウレンソウと似ていますが、非なるもので、独特の風味と粘りが特徴です。
自宅菜園で栽培したことがある妻は遠慮なく、「ありがとうございます」。
Fさんが勢いのいい苗をハンドスコップで掘り出して、ポットの中へ入れてくれました。
ツルムラサキの隣には、生えたばかりの鮮やかな黄緑色のレタスの苗が…。
すると、「レタスも持っていきなっ」。
そのありがたい言葉に抵抗する理由などなく、いただくことにしました。
そして、丸オクラの種をまいた一画へとたどり着きました。
茎がしっかりと伸びて、その先にはツルムラサキよりやや大きめの双葉をしっかりと広げた苗がやはり30、40ほど。
ここでもFさんの「選球眼」ならぬ「選苗眼」にかなった元気な苗を2つ、3つ選んでいただき、分けてもらいました。
Fさんの苗なら今年の収穫はもはや約束されたも同然。
感謝、感謝です!
自宅の丸オクラはいまだ「音信不通」状態で、自分の非力さに情けない思いはありますが…。
ミョウガ、九条ネギも
さて、Fさんが用意してくれたポットの数は10数個-。
その後もミョウガに九条ネギ等々を分けていただいきました。
ミョウガはこれからが季節。
独特の苦みと辛みがあって、冷やっこや刺身の薬味のほか酢漬けにして食べてもおいしいですね。
早生ミョウガとのことで、7月ごろには収穫ができるとか。
ただし「育てる場所は乾燥しないように日陰で」とアドバイスをいただきました。
九条ネギはその名の通り、京野菜の代表格ですが、改めてネットで調べてみたら浅黄系、黒種系の2系統があるようです。
確かに、スーパーなどでどちらも目にしたことがあります。
今回いただいたのは浅黄系。
主に薬味として使われ、Fさんから以前も「プランターで簡単に育てられるから」ともらい受けたことがあります。
季節を問わず、そば、うどん、そうめんの薬味やほかの料理でも重宝します。
根を残したまま土から少し上の部分から切り落として、サッと水で洗って刻むだけで使えて便利だし、そのまま放っておいても、また葉が自然と伸びてくるため、収穫の楽しみはエンドレス…。
一方の黒種系は、関東で馴染み深い「長ネギ」のように鍋料理などで使われれ、土寄せをして白い部分を伸長させる必要があって、素人のプランター栽培向けではありません。
引っ越し先が課題
Fさんは今年86歳。
その強い足腰、身のこなしは、まったく年齢を感じさせません。
息子さんと一緒にこのほかにトマト、キュウリ、ナスも手掛けていますし、秋から冬にかけては例年キャベツ、ハクサイ、ダイコンも栽培するなど、ただただ脱帽するばかり。
畑作業は約1時間。
Fさんから分けていただいた苗ポット十数個をプラスチック製のカゴの中に入れて、畑から作業小屋まで持ち帰り、ジョウロでさっと散水して、この日の苗の「授与式」は終了。
苗たちを改めて見てみると、いずれもみずみずしく、元気いっぱいです。
妻と一緒に調子に乗って多くの苗をいただきましたが、わが家の狭庭では、地植えできるほどのスペースも、地力もなし。
プランターだってそうそう置けるわけではありません。
それぞれの苗の引っ越し場所をどのように確保して育て上げるか…
次なる課題です。