再び父からコール
父の介護老人保健施設への入所から一夜が明けた午前9時過ぎ。
父から電話-。
「俺だ。今ここにいる」
話すトーンは、昨夜と比べるとぐっと落ち着いていますが、どうも〝ここ〟がどこかの認識は十分とはいえない状況のようです。
私「ここって、O医院に隣接している介護老健施設でしょ?」
父「いや、違う」
私「いや、違わないよ。そこはO医院のグループ施設のSパレスでしょ?」
父「S パレス…そう、そう。そこに居るから、迎えに来て」
昨夜、明明後日に面会に行くと説明したのですが、すっかり忘れてしまったのか、それとも念押しのアッピールなのか…
私「昨日も話したけれど、火曜日に行きます。明後日、面会にね」
父「いいですよ。我慢してるから。どうかお願いします」
ようやく納得してくれたかと思いきや…
父「(お世話になった訪問看護の看護師)Nさんと話をしてもダメか」
また昨日と同じ事を聞いてきます。
私「ダメでしょうね。Nさんと話をしても、そこから移動はできないよ。家に戻っても誰も居ないんだから、面倒をみてくれる人がいないから。Nさんから昨日、一緒にI先生に診てもらって、そこに居た方がいいと判断されたので入ることになったって聞いてますよ。そうでしょ?」
再び、説得を繰り返すと…
父「そう…。じゃ、ここに泊まっているから、明日、明後日な。どうか…」
3分ほどの短いやり取り。
話す内容にチグハグさ、繰り返しがあるものの、〝聞く耳〟を取り戻しており、精神的にだいぶ落ち着いてきたようです。掛ってきた電話はこの1本だけ。
衰弱の兄からコール
しばらくすると、今度は兄から電話-。
兄「昨日の夜も何度か親父から電話があったけど、俺は出なかった」
私「そうした方がいい。親父は『つながるまで毎日でも電話してやるっ』て言っていたから…。でもそっちがつながらなかったら、こっちに連絡が入るから出なくても大丈夫。出ない方がいい。今朝も俺の方で親父と話をしているから」
「そうか。親父がどんな様子かな、と思って」
父の介護の関係で体調不良を訴える兄と父を一時的に〝遮断〟するため、父からの電話に出ないように勧めてたのにもかかわらず、わざわざ親父の様子を聞いてくる兄-。
父だけでなく、兄も精神的に追い詰められています。
家族介護の呪縛から抜け出せず、気の毒です。
衰弱する兄にどこまで話すべきか悩んだ末、概要だけ伝えることに。
私「昨日は大きく環境が変化したから、親父はパニック状態に陥っていたけど、今朝話した感じでは、徐々に落ち着いてきていると思う。俺からは『自宅では食事対応が自分独りではできなし、面倒をみてくれる人もいないわけだから、入所先で食事をきちんと取ることが体にとっていいことだから』と言ってある。それから『担当医のI先生と看護師のNさんと俺と兄貴が連絡を取り合って、自宅に居るより入所した方がいいという判断になった』とも、ね」
兄「ありがとう…もう限界なんだな。ようやく俺も定年退職して、好きなことができると思っていたんだが…。俺には俺の、子どもや孫との生活があるし…」
私「分かる。分かってます」
兄「昨日、親父が入所するときにNさんに同行したが、そのときは『俺もついにここへ入る日が来たか』とか言っていたから、自分で納得していたものと思っていたら電話を何度もかけてきて『一生恨んでやる』って。まいったよ。そう言われてもな…」
私「うん、うん」
何だか、昨日から今日にかけて、父と兄の2人相手に精神的なケアを交互に行っているような感じです。
ケアマネから衝撃コール
夕刻コンビニでちょっとした買い物をしていると、スマホがブルブルと震えました。
着信バイブレーションに、またか…。
親父?兄貴?どっちかと思って、着信表示を見たら、父がお世話になっているケアマネージャー(ケアマネ)のYさんからの電話でした。
何だろうと思って急いで店の外へ出て、応じると、その内容に衝撃を受けました。
Yさん「お兄さんから訪看事務所の方に『もう俺は消えた方がいい』『居なくなった方がいい』と、死んでしまいたいというような趣旨の電話がありまして、ご報告しようと思って」
えっ!?一瞬、わが耳を疑いました。
話は続きます。
Yさん「最初は誰からの電話かが分からなかったのですが、お兄さんじゃないかという話になって、事務所から私のところに連絡がありました」
私「兄がもう死にたいというような電話をですか?事務所に?」
Yさん「はい」
確かに、ここ最近の兄は酒に酔って「親父を殴ってしまいそうになるときがある」「俺は消えた方がいい。親父の前から居なくなった方がいい」などと口にすることもありましたが、死んでしまいたいといった類いの発言は聞いたことがなかったので、とにかくびっくりです。
Yさん「それで私、本日はお休みだったんですが、事務所から連絡があったので気になってお兄さんと話をしました。お兄さんはお疲れの様子で、自分も明日病院へ行くと」
私「病院?兄がですか?今日の午前中、電話で話をした時はそんなことは言っていなかったですが…。父が昨日から繰り返し兄の携帯に電話をしているようで、父からの電話はこちらで対応するので、兄には対応しなくていいよという話はしていました。ここ最近、兄も父の介護で限界に達しているようで、もうこれ以上の自宅介護は難しいので、父はやはり施設でお世話になるしかないと思っているところです…」
昨日からの出来事について話すと、Yさんは「そうですね。私もその方がいいと思います」とケアマネとしての見解を示してくれたのでした。
兄に直接電話をして確認などしようものなら、まいっている神経を逆なでし、ますます変な方向へ向かってしまうのではないかと考え、義姉に様子を聞いてみることにしました。
義姉はここ数日実家に戻ってこともあって、父が昨日施設に入ったことを私の電話で知ったようです。
逆にこちらから昨日からの出来事を説明して、父と兄が微妙な関係に陥ってしまっていること説明することに。
私が「親父から兄の携帯に何度も連絡が入ってきて、攻撃的な言葉を受けて、かなりまいっているようなので、電話でいいので、励ましてやってください」とお願いすると「分かりました。ありがとうございます」と応えてくれました。
こちらも来週火曜日の父の面会を控え、緊張が高まってきました。
面会に兄は同席しない方がいいかもしれない、との思いが頭をよぎったのでした。