ゆゆしいダウンサイジング
今朝の日本経済新聞に、国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口に関する記事が大きく載っていました。
2070年には日本の総人口は約1億2,600万人から3割減の8,700万人まで減少、日本人の出生数は50万人を割り込み、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は前回見込んだ推計値よりさらに下回るとしています。
国勢の萎縮を招く、ゆゆしいダウンサイジング-。
退職してからは、お昼前後に外出する機会が増えました。
バスや電車で移動してみると、私よりずっと先輩格の男女が何と多いことか。現役時の、学生や会社員、子ども連れのお母さんたちが乗降していた情景との違いに最初は違和感を覚えたぐらい。
スーパーに百貨店、その他の店舗に入っても先輩たちが席けん。
もう高齢化社会などでなく、すでに高齢社会に突入していたんだと実感する日々です。
年配者が増える一方で子どもが生まてこなければ、社会の活力どころか、社会そのものが維持できなくなるわけですから、問題は深刻です。
しかし、岸田首相が「異次元の少子化対策」に取り組むと発言し、その施策の一部が漏れ聞こえますが、いずれも新味に欠けます。
出産手当の増額、不妊・不育症治療の強化、認定こども園・保育所の整備に児童手当の拡充、そして放課後児童クラブ・こども食堂の充実…
従来路線の延長、大盤振る舞いにしか映りません。
出会いの創出を
内閣府ホームページ(HP)掲載の令和4年版少子化社会対策白書に目を通すと、少子化の実相と原因が浮かび上がってきます。
- 婚姻件数は年間およそ52万組
- 未婚率は上昇傾向が続き、50歳時の未婚割合は男性28.3%、女性17.8%
- 平均初婚年齢が夫31.0歳、妻29.4歳と晩婚化が進行
- 第1子の出産時の母親の平均年齢が30.7歳と晩産化も進行
- 夫婦が理想の子供数を持たない理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が56.3%と最多、次いで「高年齢で生むのはいやだから」「欲しいけれどもできないから」
※数字はいずれも2020年
働いても所得が上がらず、養育費・学費が上がる一方では不安が先立ち、子どもを産み育てる気持ちが萎えるのは当然のこと。そうした現状を考えれば経済的な援助・支援を一概に否定するつもりはありません。
ですが、低迷し続けている出生率そのものを上昇させなければ、総人口1億人切りの「8700万人ショック」に立ち向かい、少子化の根源を断つことはできません。
妊娠、出産、子育て以前の「結婚」「結婚前」のステージにこそ目を向けることが必要と考えます。
2070年はおおよそ50年後。
一国のリーダーとして先見性を持って50年、100年先を見通して、男女が出会って結婚へと発展する機会創出まで取り組んでこそ「異次元の少子化対策」と言えるのでは。
少子化社会対策白書によると、未婚者(25~34歳)に独身でいる理由を尋ねると、男女とも「適当な相手にめぐり会わない」(男性:45.3%、女性:51.2%)が最多で、「異性とうまくつきあえない」「結婚資金が足りない」が増加傾向にあるとしています。
コロナの影響でリアルな出会いの機会が少なくなり、リモートワークなどで社員同士が接触することも少なくなってきている中、最近はネットを使って交際相手を探す「マッチングアプリ」などを通じた婚活が広まっているといいます。
白書でも、地方公共団体によるAIやビッグデータを活用した結婚支援の取組を支援し、2021年8月1日時点で22の県においてAI 等を活用したマッチングシステムを導入してお見合いに至る割合が上昇するなど、従来のシステムに比べて高い効果をあげている、と指摘しています。
政府はもっと出会いの創出に力を注いではどうでしょう。
デジタル活用によるマッチングによって、結婚前には地域・自治体の枠を超えたリアルな人的交流につながりますし、結婚に至れば交流から移住→人口増→地域活性化の可能性が高まります。
一方、出会い系サイトやマッチングアプリをめぐっては弊害も起きています。
きちんとした仲介・紹介の下、登録者の身元を確認したり、安全を担保したり。ストーカーや誹謗中傷といった行為の未然防止策を講じなければならないのはいうまでもありません。
賃上げ、働き方改革不可欠
出会いがうまくいったとしても結婚まで至るには、安心して出産、子育てができる経済環境の整備が不可欠です。
先ずは正規、非正規雇用間の賃金格差の是正と、賃金そのものの上昇が担保されなければなりません。
非正規雇用割合は依然上昇傾向にあります。
少子化社会対策白書は所得についても分析していますが、20歳代では150万円未満の雇用者の割合が増加しており、30歳代では100~400万円未満の雇用者の割合が増加しているおり、若い世代は低所得層にシフトしています。
雇用形態別に男性の有配偶率をみると、正規の職員・従業員では25~29歳で30.5%、30~34歳で59.0%となっているのに対し、非正規の職員・従業員では25~29歳で12.5%、30~34歳で22.3%となっており、それぞれ正規の職員・従業員の半分以下となっています。
夫婦で働いて総所得が800万円ではやはり厳しい状況です。
同一労働同一賃金、賃金のベースアップに加え、男性の育児休業取得の促進や育児休業給付金の引き上げ、女性の妊娠・出産後のスムースな職場復帰の保証は必至と考えます。
これには企業・会社側の意識改革が不可欠です。
そうです!
岸田首相は「新しい資本主義」で「中間層を再構築する」とも述べています。
分厚い中間所得層を形成することが出生率引き上げに最も効果があり、少子化対策の根本なんですよ。
いっこうにいまだ具体策が示されていませんが、少子化対策のその先に「日本の新資本主義」「中間層再構築」があるのではないですか、ね。
もう政労使会議でも、どんな審議会でもいいですから、とにかくリーダーシップを発揮してもらいたいものです…。
いや~、本日は少々堅い話に終始してしまいました。