父からの電話
「病院へ行ってMRI検査を受けたんだが、医者から結果を説明したいので家族のどなたかに来てもらってくださいって言われた」-。
実家の父からそんな電話がかかってきたのは1週間ほど前のこと。
「いつも診察とか検査が終わったら、自分ひとりで説明を聞いていたんじゃないの?」と尋ねると「いつもはそうなんだが、今回は家族の人に来てもらってくれと…。ちょっとこっちへ帰ってきてもらって、病院へ行って話を聞いてもらえないか。医者の話がよく聞こえなかったんだが、入院してもらおうかとか言ってたような気もするし…」との答え。
父は今年8月で92歳になったばかり。
1カ月に1度の頻度で近所のかかりつけ医のところで定期的に受診しているのですが、前回の通院後まもなくMRI検査を受けることになったようです。
そのMRI検査の結果を家族に説明したいということは、何かしら自分の健康状態が悪いところがあるからだと考え込んでいるみたい。
実家は兄夫婦の居宅と2階通路でつながっている二世帯住宅になっているのですが、兄も何かしらと所用があって忙しくしているらしく、遠慮して病院への同行を切り出すことができずに躊躇している雰囲気が電話でも伝わってきました。
「急に帰ることはできないので、私の方から兄さんに病院へ一緒に行ってもらって説明を聞いてもらえるように頼んでみますよ」。
そう言った後、すぐ兄に電話をして病院同行をお願いしたところ、快諾してもらいました。
これでひと安心と思ったのですが…。
帰ってきてくれないかという父の願いに沿うことができず、兄に一方的に任せてしまうというのは、どうも「寝覚めが悪い」…。
病院同行は兄にお願いすることにした一方、息子として父の病状をなるべく早く共有するため、やはり帰省することにしました。
膵嚢胞性腫瘍
自宅を出てからおおよそ4時間かけて実家に到着。
カギのかかっていない玄関を開けると、父はベッドでお昼寝中でした。
朝イチで兄と一緒にかかりつけ医から説明を受けると言ってたので、疲れたのでしょう。
しばらくすると、隣の家から兄がスマホを片手に持ってやって来て「医者の説明を録音したからこれを聞いてみて。その方が正確だろうから」とスマホをリビングのテーブルの上に置いてくれました。
スマホ録音を再生して、かかりつけ医の声に耳を傾けると…。
膵臓がだんだん悪くなっています。
むくみはありませんが、腎臓も少しずつ悪くなっています。
2022年5月に大学病院を紹介して膵臓を診てもらっていますが、そのときの診断では「膵臓の嚢胞(膵嚢胞性腫瘍)が増大傾向にあり、がん化の危険性がある。内視鏡を使った対応もあるが、年齢を考えると危険が伴うし、治療、手術は難しい。今後閉塞性黄疸、十二指腸狭さく、がん性腹膜炎の症状が出てくる可能性がある」とのことでした。
膵臓がだんだん悪くなっています。
むくみはありませんが、腎臓も少しずつ悪くなっています。
2022年5月に大学病院を紹介して膵臓を診てもらっていますが、そのときの診断では「膵臓の嚢胞(膵嚢胞性腫瘍)が増大傾向にあり、がん化の危険性がある。内視鏡を使った対応もあるが、年齢を考えると危険が伴うし、治療、手術は難しい。今後閉塞性黄疸、十二指腸狭さく、がん性腹膜炎の症状が出てくる可能性がある」とのことでした。
先日のMRI検査の結果、膵臓の嚢胞が大きくなってきています。
糖尿病の数値(血糖値ヘモグロビンA1c)も6.5、そして7から8、直近では10.1と悪くなってきています。
こういった状況だと膵臓がんの可能性という所見があります。
がん化してきているのであれば、今後膵管が拡張するとか、嚢胞の中に何か腫瘍みたいなものが出てくるといったこともあるかもしてません。
ただ、がんでなくとも放っておくしかないのですが…。
糖尿の値がこれ以上高い状況が続くようであれば、腎臓も悪いので薬を増やして対応するということはなかなか難しいので、インシュリンを打って対応してもらうことになります。
糖尿の値が11,12で生活している人もいるが、1日1回インスリンを打って8か9まで下がるかどうかといったところでしょうか。
毎日チクッと、ご家族に協力してもらうということになります。
心臓も腎臓もぎりぎり。
利尿剤を使ってどうにか持っているんですが、もともと心臓の動きも悪い。
今後心不全になる可能性もあります。
心房細動からくる軽い脳梗塞も起こしていますね。
物忘れとかもありませんか。
そろそろ車の運転の方も考えてもらった方がいいかな。
とりあえずは今後も毎月血糖を測って様子をみていきましょう。
録音を聞きながら、担当医の説明をメモをとっていましたが、気持ちが落ち込みます。
年齢からみて、持病がよくなることはないだろうとは思っていましたが、病状が少しずつ悪化していることを知らされたのでした。
家族会議
夕刻となったため、食事を取りながら今後の対応について話し合うことに。
兄が最近父がお気に入りの甘辛トウガラシと豚肉の炒め物を作ってくれました。
たまに辛いトウガラシに当たるのですが、なかなかのお味。
後はスーパーのできあい惣菜を3人で突きながら…。
やはり、耳の遠い父はかかりつけ医の説明を聞き取れていませんでした。
父「どういうことだ?」
私「膵臓が悪くて血糖値が高いんだって。腎臓とかも悪いのでもう薬で対応することは難しくて、このままの状況が続くとインスリンを毎日自分で注射しないといけなくなる。自分で打てない場合は家族の協力も必要になるってさ」
兄「医者にはアルコールは飲んでいないって説明しているみたい。その場で否定するのも何なので黙っていたが…」
私「それじゃあ、もうアルコールは禁止!それで血糖値が下がらなかったら、やっぱり膵臓に問題があるということがはっきりする」
父「糖質ゼロ、プリン体ゼロのやつを飲んでいるんだが、それでもダメ?」
私「ダメ。自分で自分の身体を考えて」
兄に聞くと、以前は発泡酒350㎖缶を3、4本開けたり昼からいただいたりということともあったようですが、最近は夕食時に2缶程度と酒量は減ってきていたようです。
この日も父の片手には「ゼロゼロ」缶。
父が「何の楽しみもないなぁ」と嘆くので、「明日から発泡酒1本+ノンアルコール1本にして、徐々に発泡酒を減らしていって最終的に禁酒」との折衷案を提案して、〝合意〟に至りました。
しかし、合意後間もなく、父は私が帰省したことをダシにして「今日は特別」と言って、兄と私の制止を振り切って、3本目を開けてしまいました。
本当に明日から合意は履行できるのでしょうか?